◆第2章 観音様に抱かれて笑顔で


ちいさな命の終わる瞬間


そして、再び脈拍が低下し始めました。
勿論、看護婦さんも、ドクターもすぐに駆けつけてくれましたが、
私たちは、前から、思いを伝えていたので、
してくださったことは、
苦しくないように酸素濃度を上げてくれることと、
そして、役たたずとなった点滴の針を抜いてくださったこと。
聴きたくないパルスメータの音を止めてくださったこと。
痛いだろう、尿管を抜いてくださったこと。
もう、必要のない、マーゲンチューブは、自分で抜きました。
心電図を取るための磁石をはずしてくださったこと。

つらくないように、酸素マスクだけは手で支えてあげて
最後は、私の腕の中で抱かれながら死なせてあげたいと思い、
ぐったりとした彼を、そっと抱き上げました。

不思議と、苦しそうではありませんでした。
眠っているようでした。
そして、そのまま、静かに自然に、逝ってしまいました。
声もかけなかったし、かけられなかったし、
みんな、一言も、励ましたりせず、ただ静かに見送ってくれました。
みんな、涙でぐしゃぐしゃの顔をしていて、
みんな、、

長かったね、頑張ったね、
やっと逝かせてあげられたね、
眠るように静かに、逝かせてあげられて、よかったね

誰も言葉を発しなかったけれど、そんな思いでした。

生きているだけ、それだけが苦しみそのもので、
生かしてあげるのは、周りの人間のエゴだけだった。
それでも、生きてくれることを、望んでた自分と、パパと
その気持に懸命に答えようとしてくれた徹でした。
どうすることが、私たちにとって彼にとって、最善だったのか、しあわせだったのか?
今でも分からないし、これからもきっと、答えはでないと思います。
彼が亡くなった時、「こんなに愛されて徹も幸せだったね」と
ちいさく言ってくださった方もいた。
徹はどうだったのだろう。
こんな、苦しいだけの短い人生、
喜びをを感じたときってあったのでしょうか。
この言葉に救いを感じている自分と、
彼には、もっと違う選択があったのかもしれないと思う自分がいました。



笑顔


暖かかった徹のからだも、どんどんつめたくなっていきました。
すると不思議なことに、死に顔が、微笑みを浮かべてきたのです。
きれいな笑顔でした。
笑って、逝ったのです。

彼は観音様に抱かれて、
天国に行ったのでした。

彼が生まれて、初めてみせる、やさしい笑顔
よかった、天国でかわいがってもらってる。

私も、泣いてばかりいないで、彼の冥福を祈ろう。
そして、
彼が、私の子供に産まれてきてよかったと言ってくれるような
素敵なママになろう
そして、天国でもういちど彼に逢いたい。
今度はつらさも悲しみも忘れた素敵な笑顔で
もう一度、彼のママになりたい

第二章 おわり





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