◆骨髄移植までの葛藤


大きな病院にて


年あけて一月八日、B病院の小児科へ転院しました。
外来にも行かず直行で病棟の方へ行きました。
十年前にお世話になったそのまま変わらない病棟の一室に案内されて
しばらくすると直ぐ採血、そしてレントゲン写真を撮りました。
慌ただしくデータを集めているあいだ、
初めて藍といっしょに時を過ごせる喜びを感じていました。
転院騒動よりもただ藍と共にいれることが、ただ嬉しかったのです。

入院したその日の夕方、もう検査結果がでたと報告を受けました。
予知していた結果報告を聴き、すぐに治療方針の説明も受けました。
B病院は先進医療最先端ですから速いです。それが、第一印象。
「大理石骨病」とその治療ですが、ドクターは4つの選択肢を
用意してくださいました。

1、骨髄移植(白血球の型が同じの兄弟またはドナーがいた場合)
2、幹細胞移植(多いのが母親と赤ちゃんをつなぐへその尾の
  中の血液には幹細胞が含まれているそうです
3、薬物投与など(移植のドナーがいない場合の対処療法?)
4、あきらめて、自然の成り行きを見守る(これも選択肢の一つです)

変な言い方ですが、1または2を選ぶと生きる希望を
3または4を選ぶと自然なる死を待つのみです。
そして希望を選んだとしても、移植が成功するかどうかなんて
誰にも分からないし、零才児への移植施行例はほとんどないので、
命の保証なんてありません。



骨髄移植って?


正常に機能しない本人の骨髄を破壊してその上に
ドナーから頂いた正常な骨髄を植えつけることです。

まず初めにドナー(骨髄提供者)を探さなくてはいけません
提供者からは血液を採取して患者との白血球の型が一致するかどうかが
もっとも重要です。もし型が合わなければ拒絶反応が激しく出ます。
型の一致する提供者はなかなか見つかるものではありません
そして運良く見つかって移植できても、うまくいくかはわかりません。
私たちの体には本人以外の物質が入り込むとそれを
排除しようとする働きがあり、それが拒絶反応というのですが、
その拒絶反応をなくする為に前処置をとらなければならず、
前処置とは、今持っている藍の骨髄機能を破壊して
移植される骨髄のために場所を空けることなので、
骨髄機能の無い状態がしばらくつづくことになります。
そしてその間、白血球がまったくありませんのでその間に
感染をしてしまうと命の危険があります。
ドナーから骨髄を頂くにしても、そのドナーに危険が全くないわけでもありません。
骨髄を採取するときに麻酔をして腰の骨を少し砕いて針で取るのですが、
その麻酔が99%安全だとはいえ、1%は事故による死亡例もあるそうです。
骨髄は再生機能が活発なので1ヶ月もすればもとに戻るのですが
その1%の事故例はとても恐ろしいです。
上手く移植が成功しても、免疫力はリセットになるので
体は非常に弱くなるし、生殖は諦めなければいけません。髪も薄くなる。
また非常に抵抗力も落ちるので、入院は3ヶ月以上は必要になります。
ドナーは3日から、状態によって一週間くらいの入院でしょうか。



藍はどうする?


もし成功したら普通に家でくらせるかもしれないのです。
考えるまでもなく、私たち家族は移植を希望しました。
しかし、親戚中から猛反対を受けました。
おそらく障害者を育てることになる私たちの苦労を思い、
そして長期入院することになると様々な問題が出てくるからなのですが。
まずはまだ4歳の次女は母親が必要な年なのに
長期間預けたりすると精神がゆがんでくることもあること。
両親も体力的にきつく前面サポートできる状態ではないこと。
ドナーが見つからなくて、破産借金がかさんで動けなくなること。
(ドナー適合検査一人につき2万円で、これには保険は効かず実費です。)
長期間、家族がばらばらでいると壊れてしまうなど
悪い話を沢山聞いてしまい、混乱しました。

それでも
藍をあきらめてほしい、ということなど、
どうしても受け入れることができませんでした。
お互いの気持が交差しあいすれちがって険悪になっていくのですが
藍は、できるかぎりのことをしてあげたく、絶対後悔したくなかった。

たとえ藍が最高に上手くいってもこれではずっとしこりが残りそう、
最悪の結果になればもっとひどい状態になるだろうと思い
なんとかしたいと、思いました。
藍の移植をするには、皆様の気持の良い協力がないと到底むりな話ですから
治療はやっぱりみんなが納得したうえで、
心を一つにしてやっていきたいし、
皆の気持がばらばらではたとえ藍がよくなったとしても
決して幸福な結末ではありません。
藍が入院で私は付き添いで家に居られない3ヶ月間
父親である島そだちパパが家事育児すべてこなす決心をし
気持のうえでの親戚中の協力を希望しました。



ドナーは長女でまた悩む


親戚の説得のさなかでもドナーはすぐ見つかりました。
なんと娘ふたりとも型が同じでどちらでも可能なのです。
藍に必要な骨髄はほんの60ccなので長女だと二三日の入院でできます。
次女だとまだ4歳でからだも小さいので、
採取した直後は貧血になるからバックアップの自己血を用意しておいて
一週間くらいの入院になるでしょうか。
ドナーが兄弟間だと拒絶反応も少ないので藍にも良いのです。
先生にもこれで成功する確率がぐんと上がりますよ、と
言っていただいたのですが、ここで私が悩みはじめました。

麻酔での1%の事故がもしドナーにあたってしまったら・・・。
藍だけではなくドナーの命さえ失ってしまうのです。
どうしたらいい?
今度は私がふんぎりをつけられなくなりました。
そんな中でも骨髄移植にむけてのスケジュールは進行していきます。
藍の症状も日増しに進み、機嫌が悪く
一日中ないているのをあやす日が続きます。




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