藍がうまれて三週間目頃から、目立って脾臓が大きくなりはじめたので
ステロイドを飲ませはじめました。
でも病気の進行は止まるわけではなく、日に日に藍の機嫌は悪く、
寝ている時以外はいつも泣いているようになりました。
常にだっこしたまま思いをはせるのが骨髄移植のことでした。
両親はやはり反対の姿勢を変えてはくれません。
元気な孫を傷つけるくらいなら、今の生活を大事にして、
藍をあきらめて欲しい。そして、骨髄移植をしても成功する確率は低く
ましてや、成功しても不具者になるだろうし、
そんな藍を一生みていく私がいて、私と家族が辛い思いをするくらいなら
でも、少しでも生きていく可能性があるのに、生きていけるかもしれないのに
あきらめて、なにもせず、ただ、見守っていたとして、
一体だれが幸福になれるのでしょう?
おそらく私は諦めたことを一生後悔して、
今までと同じ通常の平凡で退屈で幸福な生活に戻ったとしても
藍をあきらめてしまった十字架は一生背負わなくてはいけません。
そしてそれは、障害者とともに苦労して生きていくことよりも
比べ物にならないくらい辛い選択のように思われました。
では、私自身の満足のために藍を生かす道を選ぶのか?
家族や皆のために、藍をあきらめるのか?
どちらが正しく、どちらも間違ってはいないのでしょうけれど、
ただ、せっかくうまれてきて、まだ一度も笑顔をみせたことがない藍が
愛しくてかわいくて、哀しくて、あきらめたくなかった。
ずっといっしょにいたかったのです。
藍が息を引き取る日をただ何もせずに待つ日々を送るなんて地獄だし
きっと死んでしまってからも、後悔と自責で地獄でしょう。
そう、藍は今はたしかに生きて、もっと生きたいと泣いて訴えているのです。
大事なかけがえのない、ひとつの命をつなげたい。
たとえ障害をもってしまっても、大事にそだててあげたい。
上の元気な娘たちと同様、藍も愛しているのです。
生かしてあげることがはたして藍にとって幸せなのか?という疑問もあれど
親のエゴでしょうか、藍に側にいてほしかったのは私だったのです。
ドナーさんは長女に決めて話をしました。
貴方の骨髄を分けてほしいこと、麻酔をかけて息を止めること、
腰から太い針を挿して、骨髄を採る事、ちょっとこわいこと
そして、貴方の決心で藍が生きていけるかもしれないこと
三ヶ月は藍と母さんは病院なので、妹と父さんと三人で頑張ってほしいこと
当時小学三年生だった彼女は全てを理解し「いいよ」って言ってくれました。
しばらくして、「やっぱりこわい」とか「う〜ん」とか
「あげたいような、やっぱりやめたいような、とにかくなにされるんか」
「よくわからん。。。」とか、彼女なりに悩んでいました。
そして、最後は「こわいけど、わたしの血で藍が死なないのよね」
ひいていたけれど、決心を少しずつ固めてくれました。
こうした色々な悩みやぼやき、質問や思いなどを話していくうちに
藍の担当の主治医の先生方ととても親しくなりました。
病気のことばかりで塞いでいるのもつまらない私に
情報やあまり意味のない世間話に根気よくつきあってくださって
とても楽しく、ありがたかったのです。
看護師さんたちもとても親切で、藍にやさしくしてくださいました。
夜も眠らず泣きつづける藍を心配して見に来てくださる看護士さんに
気分的に随分救われました。
この場をお借りしてお礼を言いたいです。
移植前の検査もひととおり終えて、危険の少ないことを確認し、
いよいよ予定表をいただきました。
前処置が始まるともう後戻りはできませんから、
慎重に慎重に、感染もしていないことを確認しました。
一月二十六日、移植10日前、
翌日には大量の化学物質を投与するので、吐き気止めをまず飲ませました。
いよいよ、明日から、骨髄移植前処置の始まりです。
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