そういえば、大事なことをひとつ書き忘れていました。
骨髄移植のはじまる一週間ほど前に、「IVH」と、いって、
動脈に直接点滴の太いルートをいれました。
移植が始まると、大量に化学物質や抗生物質を投与するので、
まず食欲がなくなり、栄養が取れなくなるので、
中心動脈栄養に頼らざるをえなくなります。そして、
移植中で白血球がほとんどない状態で感染してしまった場合の治療ルート
そして、血液が凝固しやすくなるのでそれを予防するために絶対必要なルートを、
あらかじめ確保しておいて、移植治療をよりスムーズに行う為です。
さらに、移植中は毎日、血液検査が必要なのです。
そのために毎回、とても痛い注射針をさして採血するのは、
本人にとても負担とストレスがかかるのですが、
このルートから採血すれば、痛みを感じることはありません。
藍も、右脇の下腹あたりから、大腿部の太い動脈血管に二本のIVHをいれました。
IVHを入れた日から、毎日主治医の先生がそこのガーゼを交換しにきてくれました。
この時間が母にとって、とても楽しみな時間になっていくのです。
先生といろいろなお話しができるからです。
藍のこれからのこと、心配なこと、移植のだいたいの様子、
ただの不安な気持、つぶやき、などなど、いろんなことを聞いていただきました。
関係のない、家族の自慢話なども・・・。
そして、これは余談なのですが、10年前と比較して、医療機器がすごかった。
点滴ルートの接続部分がハイテク樹脂(?)で、できていて、ふたがいらないのです。
必要な時にアルコール綿で消毒して注射器、または点滴接続ルートを差し入れて、
終われば抜くだけで自然と差し入れ口が閉じるので非常に清潔です。
ただ、抜けやすいので、テープでぐるぐる巻いて厳重に止めていました。
吐き気度めを飲ませた翌日、いよいよ化学物質投与の時がきました。
初めてしまったらもう後戻りはできないので、
その日は緊張して落ちつかなくて、時計ばかりを見ていました。
とても、恐かった。どうしようもなく、恐かった。
投与のとき、気持は高ぶりましたが、取り乱さずになんとか平常心をたもつ事ができました。
なんてことはない、注射器で鼻腔カテーテルから薬を注入するだけなのですが、
ものすごい、厳かな儀式のような気分でした。
でも、これが上手く進めば、藍は生きていくことができるのです。
10分経過、変化無し。1時間経過、藍、眠り始める。いつもとまったく変わりなし。
そのうち私も気がついたらうとうとと眠ってしまいました。
早朝、変化無し。先生が化学物質の血中濃度計る為に、
ひんぱんに採血をしていくので、藍の顔色も悪くなってきました。
検査してみると貧血が進んでいたので、急きょ輸血。でも藍は元気です。変わりなし。
朝、いつもと変わりのない藍の顔を見て、少し安心した私でした。
引付けやけいれんがこなくてよかった・・・。嘔吐もないようで、よかった・・・。
でも、まだまだ、始まったばかりです。
この頃の藍といえば、目覚めていると機嫌が悪くてぐずついて
抱っこしていればなんとか泣きやんでいました。
今思えば、きっと脾臓が大きく腫れてきているのや、
その治療のために内服していたステロイドの副作用もあったのでしょうが、
ホント、ずっと泣きどおしでずっと抱いていました。
そして、大理石病の症状が進んでいるので、脳にダメージがきているのか、
よくつっぱったり、体をびくつかせることが多くなりました。
認めたくないけれど、もう1ヶ月過ぎるのに目が合わない、
笑わない。神経系の症状がでてる・・・。
それでもいい、生きていてくれたら、私は嬉しい。
おにいさんの分まで大事に育てるから、藍、頑張ろう!
骨髄移植のカウントダウンは10日前から始まってスケジュールにしたがって投薬されます。
4日目くらいから白血球の数がみるみる減少しはじめ、
BMT(骨髄移植)5日前にはクリーンルームに入室しました。
まだその時点では白血球11500あったものの、次の日は7700、そして、
その次の日は3900、BMT前日には1100まで落ちました。
藍は激しい引付けやけいれんもおこすことなく、順調に予定どおり進んでいきました。
少し気になったのが3日前になって、感染値が上がってきたのです。
何かに感染したらしいです。これもすぐ処置。
通常から抗生剤は予防的に飲んでいるに加えて、新たに強力な抗生物質も投与。
どうしたんだろう、これだけ気をつけているのに、
次の日は感染値はさらに倍に増えていました。
私は気もそぞろだったのですが、先生方は落ち着いていらしゃってて、
このくらいなら、決行します。大丈夫ですよ、と励ましてくださいました。
たしかに、数字はあがっていても、(機嫌は悪いのですが)藍は元気そうです。
BMT前日で、今まで飲んでいた化学物質は終わりです。
藍の造血細胞は破壊され、新しい元気な骨髄を受け入れる準備もすべて整いました。
BMT前日、ドナーの梨奈も到着しました。
久しぶりに逢えた梨奈は少しお姉さんに成長したように頼もしく見えました。
私が病院で付き添いを続けている間、ゆいの面倒を見ながら、
頑張ってきているのだと思うと、込み上げてくるものがありましたが、
できるだけ普通に、何も気にしていないように、さり気なく、なにげなく、
骨髄取るのは、恐いけど、寝てるあいだに終わるから大丈夫だよ、と、
楽しい雰囲気で伝えました。
もし、麻酔が失敗して彼女が戻ってこなかったらどうしよう、という思いもまだありました。
でも、ここで、後戻りしてはいけない。
藍はもう、骨髄を壊したので、どうしてもドナーの骨髄がいるのです。
進まなくてはいけない。大丈夫!絶対上手くいく!
先生を信じよう。みんなを信じよう!神様を信じよう!
「梨奈ちゃん、恐いだろうけど大丈夫だから!」
笑顔で何度も足をはこび、声をかけてくださった先生方、そして、なによりも、
わかっているのか、わかっていないのか、
「ちょっと〜こわいのよね〜」と、言いながら、にこにこしている梨奈が。
そして、「藍ちゃんところにいっててあげてね、私は一人で平気だから」と、
初めての病院でのお泊りは不安だろうに、
しかも明日は手術なのに、藍に思いやりの心をみせてくれます。
私は藍のクリーンルームに戻って、なんて素敵な子に育ってくれたのだろうと、
まっすぐ育ってくれた彼女に心から感謝し、涙が止まりませんでした。
藍、貴方は、すてきなお姉ちゃんから大事な贈り物をもらうんだよ、
元気になって、絶対お家に帰ろう!
明日はいよいよ移植です。
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